人によって背の高さや手・足の大きさが違うように、爪の大きさや形も違いがあります。筆者はネイリスト時代にたくさんのお客さんに施術をしていましたが、爪という小さなパーツでも、大きさや形がこんなにも違うんだなあと思っていました。例えば二人のお客さんに対して、同じカラー・デザインの施術をしても、爪の大きさや形が違うので印象も異なります。また手肌の色、つまりパーソナルカラーに合うかどうかも、見た目の印象が変わるポイントです。このように、ネイルのカラーやデザインだけでなく、地爪によっても手元の見え方が異なるのです。では、深爪や短めの爪の場合はどうでしょうか。地爪が短い人は「ショートネイル」とも呼ばれており、ショートネイル向けのネイルデザインは豊富にあります。しかし深爪の場合、ジェルネイルができないと思っている方がいるようです。果たして本当にそうなのでしょうか。今回は、深爪だとジェルネイルはできないのかという疑問について解説して参ります。また、日常使いしやすいショートネイル派の方に向けたデザインにはどんなものがあるのか、合わせて解説します。最後にセルフネイルで長さだしをする方法をご紹介するので参考にしながら挑戦してみてくださいね。
深爪ってどういう状態?
筆者がネイルサロンで働いていたときは、「どうしてもギリギリまで短くしたい、けどジェルネイルは続けたい!」というお客さんが数多くいました。たしかに、爪を短くすることで衛生的に保てますし、短い爪の方が生活しやすいですよね。家事やお仕事も、短い爪のほうが作業しやすいのではないでしょうか。また、食品、調理、医療、介護などのお仕事をしている方は、職業上爪を短くしなくてはならない方ばかりです。
ですが、短いほうが良いとはいえ、ネイリストの観点から解説すると、短すぎるのもおすすめできません。どんなに爪を短くしたくても、爪の先端の白い部分である「フリーエッジ」は最低でも2~3ミリほしいところです。これはフリーエッジが全くない、または短すぎると、深爪を繰り返しやすいからです。爪の健康を保ち、手元をキレイに見せたいのであれば、深爪にならないよう、フリーエッジを残して爪を切りましょう。
●そもそも深爪とは?
爪の表面を見た時に、爪先が指先の皮膚を覆っておらず、むしろ皮膚が見えるくらい爪を短くしているのは「深爪」状態です。男女問わず、自分の爪はついつい深爪にしてしまうという方は多いです。しかし深爪にすると、指先や爪先が痛くなりますよね。また爪先が指の皮膚から少しずつ剥離してしまうことも・・・。しかしそんな状態でも、なかなか深爪がやめられないという意見をよく耳にします。なぜ、ついつい深爪になってしまうのでしょうか。それは長年の習慣が主な原因かもしれません。
●爪を切る習慣と爪噛みの習慣
深爪で爪先が痛くなるという方は、爪が伸びてフリーエッジが少しでも見えてくると、ついつい切ってしまう人が多いのではないでしょうか。常にフリーエッジがないくらい切るという習慣があると、深爪はなかなか治りません。また爪を噛む癖がある方も要注意です。爪を噛んでしまうと、爪を作り出す部分が傷ついてしまい、キレイな爪が生えにくくなります。表面がデコボコと波打ったり、一部が欠けたような形で生えてくる可能性もあるのです。爪噛みを繰り返してしまうという方は、フリーエッジも噛んでしまうので、なかなか爪が伸びず、深爪になりやすいです。
●爪は大切なパーツ
爪は、爪の根元付近にある「爪母」というところから、新たな爪が作られます。根元から爪先に向かって伸びいきますが、その爪の色は透明です。皮膚が爪から透けて見えるので、爪と皮膚がくっついている部分はピンク色に見えるのです。そして伸びた爪が皮膚から離れることで白っぽくなります。人の爪は、爪母から指先の皮膚までを爪が覆っており、白っぽいフリーエッジが少し残っていることが、健康的な状態と言えるのではないでしょうか。
そして爪には、指先を保護して、力を加えやすくする役割があります。爪がないと何かをつまんだり、押したりすることができなくなってしまうのです。また足の爪がないと、足先を支える力がなくなってしまい、立ったり歩いたりすることも難しくなります。毎回爪を短くしたい人にとって、爪が伸びてくるのは煩わしく感じるかもしれません。ですが爪が伸びることによって手元や足元が守られ、動かすことができるのです。深爪にすると、指先の皮膚が爪に覆われていないので、爪が傷みやすくなったり、爪甲剥離が起きたりと、爪トラブルの元となります。
深爪だとジェルネイルはできない?
では、深爪状態でもジェルネイルはできるのでしょうか?結論から先にお伝えすると、ジェルネイルはできますが、持ちが悪くなるかもしれません。ジェルネイルは、どんな長さの爪にもつけること自体はできます。さらにマニキュアと比べて持ちがよく、強度もあります。平均で2~4週間ほどの持ちが期待できますが、深爪だとジェルネイルが取れる可能性が高いのです。
●ジェルネイルの塗り方
ジェルネイルの液は、水飴のような重めのテクスチャーで作られています。その液体にライトを当てることで、化学反応が起きてプラスチックのように固まるのです。そしてジェルを塗るのは、爪表面だけではありません。爪の先端にもしっかり液を塗って、ライトで固めます。爪の先端をジェルが覆うことによって、日常生活で指先を使っても、ジェルネイルが剥がれにくくなるのです。
爪が少しでも伸びていればしっかりジェルを塗ることができます。しかし深爪では、指先の皮膚より爪が引っ込んでいるので、爪の先端に塗るのは難しくなってしまいます。そのため、深爪の人はジェルネイルができても、持ちが悪い傾向にあるのです。さらに深爪に加えて、爪が薄くなっている人や、傷んでいる人はよりジェルが取れやすいので、注意が必要です。
●爪が大きく損傷、変色している場合はNG
深爪の状態でネイルサロンに行っても、ジェルネイルの施術は受けられるはずです。しかし爪が大きく傷ついていたり、剥がれそうになっていたり、茶色や緑色に変色していたりなど、深爪以外の爪トラブルが置きていたら施術はお断りされるかもしれません。また痛みや出血を伴う深爪も施術はできません。
そもそも、ジェルネイルやマニキュアは健康的な爪に塗布することが大前提です。爪に異常がある時にネイルをすると、爪や皮膚にさらなる悪影響を及ぼすかもしれないからです。ネイリストは医師ではないので、爪や皮膚を治す「治療」はできません。まずは皮膚科などで診察してもらい、爪の損傷や異常を治してから、ジェルネイルを楽しみましょう。
爪噛みでジェルが剥がれる?
前述の通り、爪噛みの癖がある人はキレイな爪が生えにくいです。さらにジェルネイルを付けても爪噛みをしてしまう場合は、ジェルが傷ついて取れやすくなってしまいます。
実は、ジェルネイルを続けることで爪噛みの癖が治ったという方もいます。下記は、筆者がネイリスト時代に接客をした方の話です。
あるお客さんはストレスで幼い頃から爪を噛む癖があり、大人になってもなかなか治りませんでした。爪噛みにより、爪の表面も指先も荒れてしまい、とてもキレイな手元とは言えませんでした。ある日、自分の結婚式をきっかけにネイルをしてみたいと思い、爪がそこまで荒れていない時にネイルサロンでジェルネイルをつけてもらいました。ネイルをした自分の爪を見て、「せっかくジェルを塗ったキレイな爪を保ちたい」という気持ちが芽生えて、爪を噛まないように意識することができたそうです。
爪噛みの癖が治らないという方は、まずは爪噛みを辞めるために病院へ行ったり、対策をすることが大前提ですが、ジェルネイルがきっかけでやめられる可能性もあるようです。
深爪でもネイルで長さ出しはできる?
常に深爪の状態だと、スラッとしたロングネイルに憧れる方も多いのではないでしょうか。そんなときは、ジェルスカルプチュアやアクリルスカルプチュアという技術で長さ出しをしてみましょう。長さ出しとは、「フォーム」という紙製の型を爪先にはめて、ジェルやアクリルで地爪の延長に長さをプラスしていく技術です。近年は、紙製のフォームを使わず、ネイルチップにジェルを入れて長さ出しをする方法も人気です。
どの方法も、長さ出しをするときは地爪をギリギリまで短くします。長さ出しをするときは、フリーエッジが1ミリ以内の方が適切とされているのです。地爪が長いと亀裂が入りやすく、爪先のフォルムがキレイに作れなかったりするからです。
しかしこれは、もともとフリーエッジの長さがある人の話です。深爪がひどい方はフリーエッジがなく爪が指先の皮膚よりも引っ込んでいるので、爪先にフォームがつけられません。フォームがつけられない状態では、ネイルサロンでの長さ出しをお断りされるかもしれません。
ちなみに、ネイルチップにジェルを入れて長さ出しをしているサロンであれば、構造上深爪でも長さ出しはできます。ただし深爪でない方と比べて持ちは悪くなりやすいです。また、多少の慣れは必要ですが、ネイルチップの長さ出しはセルフネイルでも挑戦しやすいです。
「深爪だけど、どうしても長さ出しがしてみたい」という方は、セルフネイルで挑戦してみてもよいかもしれません。
ショートネイル派の方にもおすすめなトレンドネイル
「短い爪では、楽しめるデザインも少ないのでは?」と考える方も多いようです。ですがそんなことはありません!チビ爪やショートネイルでもしっかりジェルネイルは楽しめますし、ショートネイルだからこそかわいいネイルデザインもたくさんあります。以下ではショートネイルでおすすめのデザインをご紹介します。
出典:www.instagram.com(@aramu_14)
まずショートネイル派の方におすすめしたいのは、ベタ塗りとも言われる「ワンカラーネイル」です!ワンカラーはシンプルで基本のネイルデザインですが、どんな爪の長さにも合う万能デザインでもあります。ショートネイルの方こそ、濃いめの色を使うことをおすすめします。こちらのお写真のようにくすみカラーを使ってちゅるんとツヤ感を重視すれば、手元もかわいらしく仕上がります♪カジュアルなマスタードイエローがよりおしゃれな雰囲気をプラスしていますね♡
出典:www.instagram.com(@nail.miyu_quint)
ショートネイル派の方におすすめなデザイン2つ目は、ヌーディーカラーなネイルです!こちらのお写真はチークネイルとお花のぷっくりとしたアートを組み合わせており、ガーリーな雰囲気がたまらなくかわいいですね♡透明感のあるツヤ仕上げのヌーディーカラーは、爪や指が長く見える効果も期待できます。自分の手肌に合う、シアー感の高い色を使うのがおすすめです♪
出典:www.instagram.com(@ange_to_tsume)
こちらのお写真のような、ニュアンスネイルでメタリックカラーを加えるのも、ショートネイルさんにおすすめです!中指のブラウンがアクセントになっており、モネの絵画のような色の混ざり方がアーティスティックです♡ニュアンスネイルはランダムな色使いが特徴的なので、オリジナリティーあふれるデザインが好きな方は是非トライしてみてください!
出典:www.instagram.com(@erimon0108)
最後にご紹介するのが、おしゃれな雰囲気抜群のアシンメトリーネイルです!ホログラムでの囲みネイルや、シンプルなフレンチネイル、ワンカラーネイルなど、様々なデザインで盛りだくさんのネイルですが、くすみカラーや淡色でまとまっていてかわいいですね♡異なるデザインやカラーでも、左右の手でアシンメトリーにして色味をまとめることで、しっかりおしゃれなネイルができあがります♪
ショートネイルでもおしゃれでかわいいネイルデザインばかりですね♪深爪だとジェルネイルの持ちは悪くなりやすいですが、ジェルネイルを楽しむことはできるので、是非ネイリストに相談してみてください。
セルフネイルで長さだしをする方法
深爪だとネイルサロンで長さだしをすることが難しいということをお話してきました。では、セルフネイルでどうやって長さだしができるのか気になりますよね。ここからは長さだしの種類と、深爪さんがセルフネイルで比較的やりやすい長さだしの方法についてご紹介します。
●長さだしの種類
・ジェルスカルプチュア
ネイルフォームという台紙の上に長さだし用のジェル(ビルダージェルなど)で人工爪を作るやり方です。柔らかいのがジェルの特徴なため、自爪によくフィットしてつけ心地が良いのが魅力です。ただし強度が弱いので5ミリ以上のロングネイルには向かないというデメリットもあります。オフは普通のジェルと同じようにできます。
・アクリルスカルプチュア
アクリルパウダーという粉末にリキッドを混ぜてミクスチュアと呼ばれるものを作り、このミクスチュアをネイルフォームの上に乗せて人工爪を作ります。ジェルスカルプチュアより強度が出るのでロングネイルしたい方に向いています。ミクスチュアの固さをちょうどよく作ることと、臭い対策が難しいのでセルフネイル向きではないデメリットがあります。
・ネイルチップ
爪先の部分だけのハーフチップというネイルチップをグルーで爪先につけて長さだしをする方法もあります。チップオーバーレイと呼ばれます。ネイルチップという形のある程度出来上がっているものを使用するぶん、時短しやすいというメリットがあります。ただし、アクリルスカルプチュアほど、自由にロングネイルを作ることはできません。
・ポリジェル
ポリジェルと呼ばれる非常に固いテクスチャーのジェルを、ネイルチップフォームと呼ばれる方に詰めて自爪に付けるというやり方の長さだしです。ライトで硬化してネイルチップフォームを外すとフォーム上に作った長さが人工爪になります。テクスチャーは固いですが、ジェルなのでジェルリムーバーを使ってオフすることができます。
●深爪さんにおすすめなのはポリジェル
4種類の長さだし方法をご紹介しましたが、深爪さんができるおすすめの長さだしはポリジェルを使ったやり方です。ネイルフォームを使うアクリルスカルプチュアとジェルスカルプチュアは自爪の白い部分が必要になるので深爪ではできないことがほとんどです。ネイルチップのやり方もグルーが皮膚についてしまうこともあるため、あまりおすすめができません。そこでやりやすいのが、ネイルチップフォームを使用するポリジェルです。ポリジェルは、ジェルのカラーにクリア、ピンクベージュ、ラメ入りなど、10色ほどのカラーバリエーションがあります。自爪風にしたいならピンクベージュ系のカラーを使うのがおすすめです。また、カラーを塗ったりアートをしたりするつもりはないけれど、少しネイルしている感を楽しむならピンクやラメ入りが可愛く仕上がります。ポリジェルをした上からジェルを塗ってアートをするならクリアにしておくのがいいでしょう。
●用意するもの
- ベースジェル
- トップジェル
- ポリジェル
- 伸ばし液(スリップソリューション)
- ネイルチップフォーム
- 筆
- 硬化用ライト
- ネイルファイル(180G)
・スターターセットもあります
ポリジェルをするために必要なものが全部入ったセットです。クリアとヌーディーカラーの2色入りです。
ベースジェル、トップジェルは普段遣いしているものでOKです。伸ばし液とは、ポリジェルをチップフォームに広げる際に筆につけて使う液です。これを筆につけてからポリジェルを触ることで筆にベタベタとジェルが付いてこなくなりますよ。ちなみに、消毒用エタノールで代用できます。その場合は小さな容器に消毒用エタノールを入れて筆につけながら使用してください。筆はスリップソリューションを使用することも考慮すると、ポリジェル用に1本平筆を用意したほうがいいです。硬化用ライトも普段使っているもので問題ありません。60秒タイマーがあるものだとより便利に使えるでしょう。ネイルファイルは硬化した後に形を整えるときに使います。スポンジバッファーもあるとなめらかに整えられます。
●付けるチップフォームのサイズを決める
爪の大きさに合わせて使用するネイルチップフォームのサイズを決めます。さらに爪の根元のカーブに合うように少し削るなどして微調整もしておきましょう。
●まずはネイルケアから
まずは下準備としてネイルケアを行いましょう。メタルプッシャーで爪の根元の甘皮を整えます。押し上げられたらキューティクルニッパーで除去しましょう。ベースジェルがサンディング必要のものならしっかりとスポンジバッファーでサンディングしてください。ダストをよく払ってから消毒用エタノールかネイルクリーナーで自爪表面の油分除去をして下準備は完了です。
●長さだしのやり方
- ベースジェルを塗ってライトで硬化。
- チップフォームにダストがついているとそのまま完成形にもダストが混じってしまうので、1度チップフォームを消毒用エタノールで拭いてからポリジェルを適量出します。
- 伸ばし液を筆に付けて、ポリジェルをチップの先端側に伸ばしていきます。厚みが均等になるように気をつけましょう。
- 空気が入らないように注意しながらチップを爪に乗せます。チップが動かないように注意して硬化します。
- 硬化できたらネイルチップフォームを外します。
- 根元の段差や爪先の形を整えましょう。
- 最後にトップジェルで全体をコーティングして硬化したら完成です。爪の裏側にトップジェルを塗るのも忘れないようにしましょう。
セルフネイルで長さだしに挑戦したいときはぜひポリジェルを使ってみてくださいね。しっかり強度もあるロングネイルにすることができますよ!