ネイルってキラキラした世界に見えるけど、実際には「ネイリストってすぐ辞めちゃうよね」って声をよく聞きます。
入社して1年以内に50〜80%が辞めてしまうとも言われていて、一般企業の10〜17%と比べてもかなり高い数字なんです。
せっかくスクールに通ってデビューしても、数年で業界を去る人が多いのが現実。
25年以上サロンをやってきて感じるのは、決して「若い子の根性が足りないから」じゃなくて、業界全体が“人を育てる仕組み”をちゃんと整えてこなかったこと。
そこに一番の原因があると思っています。
この記事では、ネイリストの離職率が高いのはなぜなのか?オーナーネイリストの目線でネイル業界を徹底解説していきます。
ネイリストは“キラキラ”の裏に厳しい現実
ネイリストといえば、おしゃれな仕事だし、美容系だしキラキラして楽しそう!と思う方もいるのではないでしょうか?
インスタには日々映えるネイルデザインが溢れていますが、実際の現場は正直かなり体力勝負です。
何時間も同じ姿勢で施術して、細かい作業の連続。
それでいてお給料は思ったより高くない…。
そのギャップに心が折れる新人さんは多いんです。
さらに「スクールで習ったことが現場で全然役に立っていない」と気づいた時、一気にモチベーションをなくしてしまうことも少なくありません。
なぜネイリストは離職率が高いの?
ここ20年でジェルネイルが一気に広がり、「ジェルさえできれば一人前」みたいな空気も出てきました。
その結果、ケアを軽視したまま働く人も増えて、技術の幅が広がらず「このまま続けても意味あるのかな?」と感じて辞めていく…。
さらに問題は給与や労働環境。歩合制、休日の少なさ、長時間労働…正直これじゃ続けられなくても当然です。
実際、スクール卒の新人をサロンが雇うのを避ける時期もありました。
なぜか?それは“即戦力”ばかりを求めていたからです。
ネイリストは、本来なら新人の安い給与でスタートであっても、練習を重ねて売上を作っていけば必ず評価も給与も上がる仕事です。
技術は必ず集客につながるからです。
ただし、“就職してからも練習を続けている人”に限ります。
ネイリストの皆さんには「現場に立ってからも練習時間をちゃんと確保できているか?」を、もう一度見直してほしい。
一方で、オーナーも「新人はすぐ辞める」と愚痴る前に、スタッフの頑張りに見合った給与やキャリアの道筋をきちんと示す責任があります。
技術職なのだから、就職してから3〜5年は基礎を学び直しつつ、そのサロンに合わせた技術を磨いて、進み続けていくのが当たり前。
だからこそ「給料安いし辞めて独立しちゃえ!」なんていうのは危険。
お客様は“趣味の延長”レベルのサロンに、わざわざお金や時間を使ってくれるわけではありません。
むしろ転落の始まりになりかねません。
未来が見えるサロンをつくれるかどうか、そこにオーナーとスタッフ両方の姿勢が問われているんです。
ネイル業界の変化と“ジェルブーム”の裏側
私がネイリストを目指した1998年は、サロンといえばケア&カラーが基本。
2002年にはスカルプ全盛期で、日本の技術は世界から注目されていました。
でもその後は流行に追われてジェル一色に。
さらにネイリストに国家資格制度がないことや、マンションでの“もぐりサロン”が増えたこともあり、教育の質はどんどん低下。
なぜこうなってしまったのでしょうか?
それはケアもカラーリングもスカルプもやるフルコースの授業よりも、ジェルを少し習ってみるという形じゃないと、ネイルスクールの生徒も集まらないような時代があったから。
厳しい指導は「パワハラ」と言われ、有能な講師が現場を去る時代に。
ここから業界の“空洞化”は始まったんです。
ジェル全盛で忘れられたもの
ここからは私自身が経験した話です。
以前は「ジェルをやってないサロンは古い」なんて言われた時期もありました。
今は納得した形でジェルネイルをメニュー化していますが。
でも基本を守ってきた私のサロンには、ジェルで爪を傷めたお客様が駆け込んでくるんです。
震災やコロナでは、ジェルに依存したサロンの弱さも浮き彫りになりました。
最後に残るのは“ケアの技術”を持つサロンだと思っています。
育爪は本来、自爪を育てて美しくすること。
ジェルを永遠に続けることじゃないんです。
簡単に始められる“自宅サロン”の現実
最近よく目にするのが「自宅で簡単にサロンが開ける!」というスクールの宣伝。
でも正直これは甘い夢だと思います。
出典:Fodiop真由(NailSalon mayunail)
ネイルサロンは、たとえ初期投資は少なくても、利益は薄いし集客はSNS頼み。
実際データでは1年以内に60%、3年以内には90%が廃業していると言われています。
趣味レベルで楽しむならいいけれど、「仕事にしたい」と思うならかなり高い壁があるのが現実。
なのに「簡単にできる」とだけ言うスクールは、若い人を夢で釣っているようにも見えてしまいます。
ネイリストを続けられる人はほんのひと握り?
ネイルスクールに通っても、10年後にネイリストを続けている人はほんの一握りしかいません。
そして長くネイリストとして活躍している人は、お客様を大切にし、お客様から支持されている人ばかりです。
ネイリストという仕事は“お客様があってこそ”。
お客様は大企業に勤めていたり、自分の仕事を一生懸命頑張っている方が多い。
そういうお客様を、ネイリストが適当な気持ちで迎えるなんて私は絶対に許せません!
だからこそ、本気でこの仕事を続けたいと思う人ほど、もっと技術の練習をしてほしいと思います。
技術の成長途中では、泣きたくなるほど悔しい時期もあるでしょう。
でもその先には、確実な技術、キャリア、そして何より“あなたのファン”になってくれるお客様の笑顔が必ず待っています。
まとめ
ネイリストの離職率の高さは「根性がないから」じゃなく、業界の仕組みが甘いからだと思います。
そこに「ジェルだけできればOK」という風潮や「給料が安いから独立すればいい」という安易な考え、さらに「自宅サロンは簡単」という甘いPRまで加わって、離職や廃業を加速させているのが現実です。
そしてもうひとつ問題なのがスクール時代の姿勢。
「このくらいでもいいかな」というレベルで卒業したり、試験合格だけを目的に仕込みありで受けた人たちは、現場に出てから技術が通用せず、結局は努力時間が増えて苦労しています。
資格を取った瞬間がゴールではなく、そこからが本当のスタート。
華やかに見えるネイル業界だからこそ、もっと足元を見直さないといけません。
努力してきたネイリストが報われるように、業界全体が変わらなきゃいけない時代だと私は強く思います。
私たち先輩ネイリストは、決して簡単にここまで来たわけではないから。
だからこそ、自分がなりたいと思った職業がネイリストなら、その業界に泥を塗るようなことはしないようにしましょうね。
簡単に辞めてしまうと自分の履歴書にも残念な結果に繋がってしまいます。
お客様との時間をもっと素敵な時間にするためには努力も必要。
努力は必ず報われますよ♡