ヘアカラーを繰り返しているうちに、気になるのが髪や頭皮へのダメージです。そんな時に選択肢としてあるのが「ヘナ」で、名前だけは聞いたことがある、白髪染めのイメージがあるという人がほとんどなのではないでしょうか。しかし、ヘナの効果は髪の毛を染めるだけではありません。古代インドの伝承医学「アーユルヴェーダ」にも用いられているように、ヘナには素晴らしい健康効果があるのです。今回は、白髪染めを超えたヘナの魅力に迫ります。そしてヘナ楽しむ爪のマニキュアや、メヘンディと呼ばれるヘナタトゥーについても合わせてご紹介します。
ヘナの効果
ヘナカラーとは、ヘナという葉っぱをすりつぶして粉状にし、水に溶かしたもので髪の毛を染めることです。天然成分なので髪に優しいのですが、残念ながらデメリットもあります。その一つが、出せる色味が限られているという点です。ヘナはオレンジ色に染める力があり、白髪をオレンジ色に染めることはできますが、黒い髪を明るい茶色にするような効果はありません。白髪混じりの髪にヘナを使うと、黒髪は濃い栗色になり、その中にオレンジ色が混じってメッシュっぽい感じになります。それはそれでおしゃれですが、全体を自然な感じに染めたい場合は、ヘナと同じ植物染料の「インディゴ」を混ぜて使う必要があります。インディゴによってオレンジの赤みが抑えられ、自然なブラウン系に染まるのです。またヘナには、染色に時間がかかるといったデメリットもありますが、それでも根強いヘナの愛用者は少なくありません。そんなヘナの魅力とは、一体どんなものなのでしょうか。
●ヘナの髪に対する効果
ヘナが髪に良いのは、単なる毛染めだけでなく、髪を健康に美しくする効果があるからです。
・髪に潤いを与える
ヘナで白髪がオレンジ色に染まるのは、「ローソン(ローソニア・アルバ)」という赤色色素成分の働きによるものです。ローソンはたんぱく質に絡みつく性質があり、髪に塗るとケラチンがローソンで覆われ、色が付きます。この時、ローソンは髪の表面に薄い膜を形成し、この皮膜が酸化することで発色するようになるのです。さらに皮膜は、髪の潤いを閉じ込めて保水力を高めるので、しっとりした髪が蘇ります。
・髪をボリュームアップする
ローソンが作る皮膜は、髪を強化し、ハリとコシを与えてボリュームアップする効果もあります。
・脱毛を防ぎ、健康な髪を育てる
もう一つのヘナの働きは、頭皮や毛穴の余分な油や汚れを吸着する作用です。ヘナによって頭皮や毛根が健康になり、脱毛や白髪を防ぎ、育毛の促進に繋がります。因みに、ダメージヘアにヘナを使った場合、最初はゴワつきやきしみがひどくなることがあります。それは、ヘナの過剰な油分の吸着作用により、トリートメント剤のコーティングが剥がれ、もとの乾燥して荒れた髪が露出するためです。その場合は、オイルでヘッドマッサージをして潤いを与えてからヘナを使うと、ゴワつきを抑えることができます。
●ヘナの全身的な効果
さらにヘナは、髪だけでなく、全身に良い影響をもたらします。ヘナは、アーユルヴェーダに欠かせない薬草として、数千年の昔から活用されていますが、それは、ヘナには次のような健康効果があるからです。
1. 浄化作用(デトックス)
ヘナの色素成分ローソンは、染色だけでなく、解毒器官である肝臓を助ける作用があります。肝臓は、体内に取り込まれた有害物質を分解し、無毒化するために、常に働きづめで疲れがちです。肝臓の機能が低下すると、処理しきれない毒素が溜まり、これが様々な体調不良や病気、老化の原因となります。ヘナを使うことで肝臓の働きが良くなり、解毒が促進されて体内浄化に繋がるのです。
2. 女性の生理を整える
ヘナは古くから、女性のお守りとしてタトゥーに使われていました。ヘナには生理痛や生理不順、更年期症状を緩和・改善する働きがあるからです。この働きはヘナに含まれる「ナフトキノン」によるもので、この成分には女性ホルモンのバランスを整え、子宮を健康に導く作用があるといわれています。また、よく「妊娠したらパーマや毛染めはやめなさい」といわれますが、それには理由があります。実は、頭皮と子宮は繋がっているといわれ、パーマ液やカラーリング剤に含まれる化学物質が、直接頭皮から子宮へと流れるとされているからです。妊娠中の毛染めは、ヘナなら安心です。
3. リラックス作用
ヘナは、イライラや不眠症にも効果があります。ヘナの成分ローソンには神経の緊張を取り除く作用があり、リラックス効果で深い睡眠をとることができます。
4. 抗菌・消炎・消臭作用
ヘナは、抗菌、消炎などの作用に優れることから、アーユルヴェーダでは傷や火傷、皮膚病の治療に、古代エジプトではミイラを包む布の染色に用いられていたそうです。ヘナで毛染めやパックをすることで、フケや痒みを防ぎ、頭皮を健康に保つことができます。
5. 血流の促進作用
ヘナパックをした後によく聞かれるのが、目がスッキリする、頭痛が軽くなるという声。それはヘナに血流促進作用があるからで、髪に良いのはもちろん、視力や脳の働きの向上にも役立ちます。このように、ヘナは傷んだ髪や弱った髪に優しい毛染めであるばかりでなく、身体や心を元気にする薬草でもあるのです。
●カラーシャンプーとの違いは?
ヘナカラーに近いものとして「カラーシャンプー」というものがあります。カラーシャンプーは染料が含まれたシャンプーでカラーリングした髪色の持ちを良くするために使用することが多いです。また、毎日カラーシャンプーすることで徐々に色を入れていくこともできます。ヘナカラーの中にはカラーシャンプーとして使えるものもありますよ。
毎日の洗髪で少しずつ髪が染まっていきます。トリートメントと併用することでより高い効果が得られます。
ヘナの活用法と選び方
ヘナの効果を得るには、「ヘナパック」がおすすめです。やり方は基本的に毛染めと同じですが、頭皮にしっかり塗りこむのがポイントで、頻度は週1くらいが目安となります。
●ヘナパックのやり方
ヘナ大さじ2とインディゴ大さじ2をボウルに取り、40~45℃のぬるま湯を加え、泡だて器で混ぜながらマヨネーズくらいのペースト状にします。霧吹きなどで髪を湿らせ、頭皮にヘナペーストを手やコームブラシで塗り、マッサージするようにもみ込みます。タオルと保温キャップで頭を包み、15~30分放置後、お湯でよく洗い流して完了です。ヘナで肌が染まることはありませんが、爪には色はつきますので、気になる場合は手袋を使いましょう。また、ヘナの成分は定着するのに24時間かかるため、ヘナパックの当日と翌日はシャンプーは控え、お湯洗いだけにします。
●ヘナを選ぶポイント
毛染め用のヘナはヘナの葉を乾燥させて粉末にしたもので、通常、この粉末をお湯で溶いて使います。数千年ものアーユルヴェーダの歴史を持つヘナは、植物アレルギーの人を除いては、基本的に安心な素材です。しかし、頭皮から吸収され体内に入り込む成分である以上、ヘナの品質は非常に重要です。
次の点をポイントに、慎重に選びましょう。
・天然ヘナ100%のもの
ヘナ製品の中には、ヘナ以外の天然素材が添加されたり、パラフェニレンジアミンといった化学染料の入ったケミカルヘナなどもあります。天然ヘナ100%(できればオーガニック)であることや、成分表示を確認することが大切です。
・粉の色
ヘナの粉は緑色をしていますが、抹茶のようなきれいな緑色が上質とは限りません。純粋な天然ヘナは通常、時と共に茶色っぽく変化します。きれいな緑色のものは、合成染料が混じっている場合もあるので、注意が必要です。
・香り
香りも、品質を見極める大切なポイント。ヘナのデメリットとして特有な臭いを挙げる向きもありますが、新鮮で良質なヘナは、日本茶や新しい畳のような、爽やかな草の香りがするそうです。酸化臭やツーンとした刺激臭がある場合は、古くなったものか、ケミカルヘナの可能性があります。
・パッチテスト
人によっては、植物アレルギーによって、かぶれたり痒みが出る場合があります。念のため、パッチテストは必ず行いましょう。
ヘナで爪のマニキュア?メヘンディの魅力
ヘナはタンパク質にくっつくことで色が発色します。髪の毛はタンパク質でできているので、ヘナを使うことで染髪できるのです。この作用を利用して、ヘナを使って爪や体を染めることもできます。なんと紀元前頃から、人々はヘナを使って爪を染め、マニキュアのようにおしゃれをしていたと言われているのです。現代ではヘナを使って爪を染めることはポピュラーではなくなりましたが、ヘナで体に模様を描く「メヘンディ」は、本場のインド、中東だけでなく日本でも楽しまれています。ヘナのペーストを使って細やかな模様を描いて乾かし、乾いたヘナを剥がすと肌にヘナの色が色素沈着します。オレンジ色に染まった部分は、2週間程度で自然と消えていきます。ケア用品としてだけでなく、消えるタトゥー、インスタントタトゥーとしてヘナは世界各国で使われているのです。
まとめ
頭皮には、心身の状態が表れるといいます。そして頭皮の状態は、皮膚一枚で繋がっている顔の肌状態も左右します。
・頭皮がカチカチに硬くなっている:頭の使い過ぎ、ストレスで緊張が続いている
・頭皮がブヨブヨにむくんでいる:血液やリンパ液の循環が悪く、頭皮に水分や老廃物が溜まっている
そんな頭皮も、ヘナパックがスッキリさせてくれます。ヘナパックをすると、その心地よさにハマってしまうかもしれません。そしてヘナはその昔、爪のマニキュアのようにも使われていました。現在ではメヘンディーという消えるタトゥーとして楽しまれています。日本にもメヘンディーアーティストはいるので、気になる方はぜひ検索サイトで「メヘンディー」と検索してみてください。